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グラトリと言えば最初に思いつくのは誰もが挑戦したくなる180°やインパクトのあるノーズスライドや360°だと思いますが、それらをまず、目標のイメージとして持っていただいて、先に、グランドトリックの基本となる「オーリー」から説明したいと思います。
「なぜオーリーが必要なのか」
ということに重点をおいて解説していきたいと思います。
これを全て読み終えたころ、あなたの「オーリー」に対する考え方はこれまでと変わると思います。

○この技を習得する上で前提となる技術
  ・スライドターン
  ・プレス



オーリーは飛ぶために行う動作であるということは誰でもわかっていることだと思います。

「オーリー」の具体的な動きのイメージは下記の様な感じだと思います。
@板の前を引っ張り上げる。
A板の後ろに体重をかけ、板を押さえつけしならせる。
B板の後ろをはじきながら、自分が飛び上がる。
C宙に浮く。
D両足で着地する。

だいたい動きはわかるのではないかと思います。
近頃はグラトリがブームになったおかげであちこちのゲレンデでオーリーの練習を一生懸命にやっている人を見かけることができます。
やってみると真似をすることは簡単にできるし、一見、その動きはダサいし、普通に両足でジャンプした方が絶対クールだからあんなの練習する必要ないだろ?と思えます。実際、自分もそう思っていました。

でもどんなグラトリのHOWTO本やビデオにも最初に出てくるのは、このオーリーです。
このオーリーにはどんな意味があるのか?なぜトリックの基本と言われるのか?
詳しく書かれた本やサイトはほとんど見かけることはできません。
オーリーの必要性とはなんでしょうか?


板があると跳びにくい??

雪面の平らな場所で板をつけずに、板をつけているつもりでその場で両足で踏み切ってジャンプして360°(一回転)してみてください。
誰でも、割と簡単に回ることができます。がんばれば540°(一回転半)くらいまで回せるはずです。
では今度は板を履いてもらって、同じように回ってみてください。何も考えずに同じつもりでやると、おそらく180°〜270°くらいしか回れないのではないでしょうか。
360°以上まわすには相当がんばらないとできないはずです。
なんと現在グランドトリックで一番回れる人はこのオーリーの技術の応用で900°回せるそうです。
なぜ360°以上も板をつけて回ることができるのでしょうか?

逆になぜ板をつけると回し難くなったのかを考えてみましょう。
原因はいくつか思いつくと思いますが、下記の原因が主なものだと思います。

@足が固定されているから足首が不自由
A板がついているので踏み切りにくい
B着地の時、足と足の幅が自由にとれない
C板が重い

このうち、誰でも条件が同じなのは@とAとBです。
どうして回せるのか?その秘密はもうひとつの要素であるCの板の重さにあります。

いつもは雪面につけて踏んでいる状態なので案外気が付かないですが、板は2kg〜3kgあります。
それにビンディング、ブーツの重量がプラスされますので、おそらく総重量は6kgを超えるのではないでしょうか?そんな重量を不自由な足の状態で持ち上げるのは結構しんどい動作になるはずです。
なおさら、その状態で踏み切ってジャンプして回るとなれば、当然、回転するのは難しくなります。
もし、この重さを無くすことができたら・・・。


それを叶えてくれるのがオーリーです。

オーリーは元々スケートボードのトリックです。
スケートボードといえば、スノーボードより一回り小さい板にタイヤが四つ付いている
ストリートアイテムです。
スケボーとスノボの構造の違う点はおわかりのとおりですが、スケボーにはタイヤがあり、スノボーの様な足を止めるビンディングがなく、スノボーより板が短いことがメインにあげられると思います。

スケボーのオーリーは、TVCM等でよく見られます。板と一緒にガードレールや柵を飛び越えていくシーンは誰もが見たことがあるのではないでしょうか。
なんとなく見ているとなんとも思わないシーンですが、よおく考えると不思議に思いませんか?
人間がジャンプするのはわかる。でもなんでスノボーみたいに足を固定してないのに板が一緒に飛んでくるの?
スプリングでもついてるんか?(笑)

スケボーにはタイヤが付いているので板と地面の間には10cm程度の間隔があります。
その間隔を利用して、板の後ろを踏みつけ地面に蹴り当て、その反動で板が飛び上がるのです。
スケボーのオーリーをイメージしてください。



@板の後ろを蹴りこみつつ、自分がジャンプする。
A地面にたたきつけられた板が反動で飛び上がる。
B飛び上がった板を空中で両足でキャッチする。
C宙に浮く。
D両足で着地する。


これがスケボーと人間が一緒に物の上を飛び越える動作となるのです。
ここで重要な点はAの板が反動で飛び上がる点です。@で既に人間はジャンプしていますから、板が後で人間を追って自分で飛び上がってくるのです。だから板と足を固定していなくても、一緒に飛び上がることが可能なわけです。
つまり、人間が飛び上がる前に特殊な動作を行い板が自分で飛び上がってくるよう仕向けているのです。

これをスノボーに応用したのがスノボーのオーリーです。
板のしなりと反発力を利用して、
板が自分で飛び上がってくれば、人間は板やビンディングの重量を感じることなくジャンプできる。
よって、当然、両足一緒に踏み切るジャンプに比べれば、楽に飛び上がることが可能になるわけです。
つまりオーリーを使うことによってより効率的に飛ぶことができるわけです。

また、もうひとつ回転する(スピン)トリックをする上で両足ジャンプより有利な点があります。
それは踏み切りの位置です。
両足ジャンプは両足の下のエッジ(2点)を使って踏み切るため、まっすぐに滑りながらでないと踏み切れず、板に回転力を与えるためにできることは踏み切る前に若干上半身をひねることしかできませんが、オーリーは踏み切りが板の後ろ(テール)の部分の1点になるので、その点を支点として、板を回転させながら回転力を殺すことなく踏み切れるため、鋭い回転力を得ながら離陸することができます。
このことは後々360°以上のスピントリックの解説で再度詳しく説明したいと思います。

実際に挑戦してみましょう。

それではスノボーのオーリーの動きのおさらいです。イメージしてください。
@板の前を引っ張り上げる。
A板の後ろに体重をかけ、板を押さえつけしならせる。(板を雪面に押さえつけ、反発力をためる)
B板の後ろをはじきながら、自分が飛び上がる。(反発力を開放しつつ、自分もジャンプする)
C宙に浮く。(膝を胸までひきつける)
D両足で着地する。

オーリーがしっかりできているかどうか、自分でわからない人は、「板が自分で飛び上がり、重さを感じない」か確かめてみよう。それができていれば効果的な正しいオーリーができている証拠です。

オーリーの必要性がわかっていただけたでしょうか?

ちなみにこのオーリーはテールを使って行いますが、ノーズを同様に使うノーリーと呼ばれる技もあります。
ノーリーの方が習得は困難ですが、よりトリッキーに見せることができる上、オーリーに比べてグラトリでスピントリックをする上でかかせない技なので、是非習得して下さい。

☆コツと注意点☆

両足着地
上記Dの両足で着地ができていない人は・・・
 ・体の軸が傾いている
 ・板を空中で両足でキャッチできていない
の2点に原因があると思われます。
跳ぶ時にはなるべく体を後に傾けずに跳びましょう。
また、しっかり両膝を抱え込むように胸まで引き付けましょう。

高さを出すには
オーリーの高さを出すには自分が高く飛べばいいと思いがちですが、実は膝の引き付けと腰の引き上げとタイミングが重要です。スケボーの映像をみるとわかりますが、実は飛ぶ人の肩の高さは飛ぶ前の立ってる姿勢と飛んでいる時とあまり変わりがありません。強く蹴るため、膝を使えるようにしゃがみ込んで、上体の引き上げと同時に蹴り込みます。(腕の動きも影響します。上体の引き上げには腕を引き上げる等上手く使いましょう。)
その後、腰を引き上げ膝を抱え込むように胸まで引き上げます。腰の引き上げでバランスをとるために上体は少し前のめりになります。(重心の位置を調節している)
こうして板と雪面の距離(高さ)を稼いでいます。
当たり前のことですが、膝や上体の引き上げと蹴り込みのタイミングがずれていては上昇と下降が打ち消し合って高く飛べません。線引きの動画のように、上昇する際、体の加重は完全になくなっていないと板の反発、上昇を妨げてしまいます。また足を引き付けた高さまでしか当然板はあがってくれないので、板の上昇を妨げないよう、それ以上に素早く高く膝を引き付けないといけません。

力を正確に伝える
オーリーをかけると真っ直ぐに飛べない人を見かけます。いくつか理由が考えられるのですが、
@板の真上に重心を置いたところから、正確に後足の上へ加重しましょう。(方向がズレないように)
A膝や腰の引き上げを意識しすぎて重心が板の上から外れてしまっている。→上体は少し前のめりにしてバランスをとり重心の位置を板の真上に調節すること。(へその位置が板の真ん中にくるようにする)
Bセッティングが悪い。→後足バインディングのアングルがプラスすぎたりマイナスすぎたりして力のかかる方向がずれている、またバイン取り付けのセンターがとれていない等も考えられます。

板の硬さによる難易度
硬い板と軟らかい板で同じだけしならせた場合、オーリーは硬い板を使うほど、強い反発力が得られます。逆に言えば硬い板ほど少ないしなりで軟らかい板と同じ仕事をすることができるわけです。
硬い板で強力なオーリーをかけれれば、ブーツの重量はもちろん、人間も多少なりとも持ち上げることができます。
こうなれば高いジャンプが可能になり、滞空時間も増すため、スピンの回転をかせぐことができます。
また、軟らかい板だと大げさな動きになる動作も、硬い板ならちょっとのきっかけで同じことができるようになります。(よりスマートに、クールに魅える!!)
しかし、硬い板ほど一瞬で押さえつけてしならせなければならないため、より筋力やコツが必要となり扱いが難しくなります。
逆にオーリーの練習のためには柔らかい板を使って、まず板のしなりを使えるよう練習するのがオススメです。トリックをやりたい人は板選びの際、自分の脚力と板の硬さのバランスを気にしてみるといいかもしれません。

しなりをかんじるために
しなりをうまく感じられない人がいると思います。重心の位置を上手く変えられず、板を上手に扱えないうちは、特に硬い板では感じにくいと思います。
しならせるために必要なのは「上手に加重を抜くこと」と「重心の移動」ですが、プレスの説明の際に詳しく説明していますので、そちらを参考にしていろいろ試してみて下さい。
板の硬さのところでも触れましたが、柔らかい板を使って、板のしなりを使えるよう練習するのがオススメです。
一回、その感覚を掴めば、ある程度硬い板でもしならせることができるようになります。

どうやっても感覚がつかめない・・・
それでもどうしてもオーリーの感覚がつかめない人は思い切ってスケボーに挑戦してみましょう。
スケボーのオーリーはスノボーと比べ物にならないくらい難しいです。
正しいオーリーができないと板は全く飛んでくれません。
私も挑戦してみましたが、滑りながらできるようになるまで毎日(雨の日も)続けて
およそ3ヶ月かかりました。。。
そのおかげでスノボーのオーリーの高さが飛躍的にあがって、
グランドトリックでグラブまでできるようになりました。オフシーズンのトレーニングにおすすめです!